星と月と恋の話
と、偉そうに言ってみたものの。

「あんまり手の込んだものじゃなくて、ごめんね」

本日私が作ったのはパスタだ。

キャベツとベーコンの、簡単な定番パスタ。

それに、生野菜をちぎって、市販のドレッシングをかけたサラダ。

私にとっては、これだけでも「頑張った!」と思うけど。

本業が主婦の結月君にしてみれば、子供の料理に等しいかもね。

「いいえ、ありがとうございます」

出されたものに文句は言わない結月君、偉いです。

彼氏に手作りの料理を出すなんて、何だか気恥ずかしい。

これで、作った料理が文句なく美味しかったら、言うことなかったんだけど。

「うっ…。ちょっと…これ茹で過ぎだ…」

私はパスタを一口食べて、顔をしかめた。

ぴったりアルデンテくらいで、火を止めたはずなのに。

すっかり芯がなくなったパスタが、口の中でやわやわになっていた。

「茹でた後フライパンで加熱調理するときは、表示時間より少し短めに茹でるのがコツですよ。フライパンで調理してる間にも、火が通ってしまうので」

と、結月君がアドバイスしてくれた。

そうだったんだ…。そんな豆知識が…。

うぅ…。パスタも満足に茹でられないなんて、女としてどうなの、私。

「ごめんね、あんまり美味しくないよね…」

「…物凄く美味しいとまでは行きませんけど、食べられないほど不味くはないですよ?」

そうね。

食べられなくはないけど、美味しくもない。適切な評価だわ。

「結月君みたいに、上手く行かないもんだなぁ…」

イマイチ美味しくないパスタを口に運びながら、私はそう呟いた。

「最初は誰しもこんなものですよ。人間っていうのは、失敗から学ぶ生き物ですから」

励ましてくれてありがとうね。

さっきの勉強会のときも、同じくらい励まして欲しかったわ。

「次の機会があったら、絶対美味しく作ってみせるわ」

「分かりました。期待してますね」

うん、期待してて。

次の機会…いつになるか分からないけど。

そのときまでには、もっと練習しておくわね。
< 415 / 458 >

この作品をシェア

pagetop