星と月と恋の話
「あれ?あれ?この人動きませんよ?」

「あのね、結月君。バリアはずっと張ってたら駄目なの。耐久限界が来て割れちゃうのよ」

割れたら、そうして一定時間動けなくなるのよ。

って、さっき説明したでしょ。

色々説明され過ぎて、覚えてないのかもしれない。

多分、さっきの勉強会の私と同じ状態。

「あっ、パンチした」

「そうね。でも、敵からそっぽ向いてパンチ打っても当たらないからね」

「あっ、ジャンプした」

「そうね。でも、何もないところでジャンプしても、ただ跳ねてるだけだからね」

なんか、もう。あれよね。

おじいちゃんのお世話をしてる気分。

なんて言ったら、おじいちゃんに失礼かもしれない。

「あっ、この人、いきなり殴ってきましたよ…!?」

「格ゲーだからね」

レベル1のCPUに、ボコボコにされる始末。

初めて見たわ。

結月君を見てたら、何だかレベル1のCPUでさえ強敵に見えるから不思議ね。

「いきなり殴ってくるなんて、卑怯じゃないですか…!」

「格ゲーだからね」

事前に予告して殴ってたんじゃ、ゲームにならないわよ。

「くっ…。ちょこざいな…!」

「…」

カチカチと、頑張ってボタンを押してるその姿は、立派に見えるんだけど。

如何せん全てがデタラメだから、結月君の動かすキャラが、おかしな踊りを踊ってるようにしか見えない。

これはこれで、楽しそうね。

…結果。

「あっ!」

「…あーあ…」

レベル1のCPUも、とうとう盆踊り大会に付き合ってられなくなったのか。

スマッシュを出して、結月君のキャラクターを吹き飛ばした。

ゲームセット。

「ぐぬぬ…。悔しい…」

「…ドンマイ…」

「僕が自分で戦った方が強い気がする。リアルの対戦させてください。絶対負けませんから」

などと、意味不明な供述をしており。

結月君は格ゲーも向いてないのね。

むしろ、何なら向いてるのかしら。

「分かったわ。別のゲームにしましょう」

「ちょっと待って下さい。リアルで対戦したい。リアルで対戦したら勝てると思うんですよ僕なら。無月院流の継承者として。一回リアルで、」

「はいはいそうねー。じゃあ次は…そうだ。『ロミオパーティー』でもしましょうか」

こちらも、家庭ゲームの定番。

大人数でやれば、盛り上がること間違い無し。

…だけど今日は二人なので、残りはCPUを交えてやりしょうか。
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