星と月と恋の話
せめて『ロミパ』なら、結月君も楽しく遊べるかなぁと思ったんだけど。

「なんかさっきから、賽の目が1から3しか出ないんですけど。このサイコロ、バグってません?」

「…」

バグってないわよ。

結月君の賽の目が、絶望的に悪い。

さっきからずっと、1ターンに1マスペースでしか進んでない。

牛歩にも程があるわ。

ここまでサイコロの目が悪いロミパも、なかなかない。

しかも。

「あっ、またスタート位置に戻された…!」

「…」

ちょっと進んだかと思ったら、必ずと言って良いほど何らかのイベントに巻き込まれ。

スタート位置に戻され、またイチからやり直し。

そして。

「…全然勝てないんですけど。ミニゲーム…」

「…」

これは仕方ない。初心者だから。

でも、ゲームの方は、結月君が初心者だってことは考慮してくれないから。

ミニゲームに勝てず、全然貯まらないコイン。

それどころか。

「あっ、また赤マス…」

「…」

上手なくらい、さっきから赤マスを踏みまくっては。

ただでさえ少ないコインを、搾り取られていく。

挙句の果てに。

「あ、なんだか珍しい…黒いマスに止まりましたよ。何が始まるんでしょうね。えぇと…悪の大王マス?」

「…」

「え?なんか、いきなり全財産没収されたんですけど。何で?」

「…」

踏んではいけない悪の大王マスを踏んで、なけなしの全財産を没収されてしまっていた。

これが人生ゲームだとしたら、例えようもない酷い人生だわ。

「…僕に、失うものなど何もない…」

「…」

…謎に格好良い名言みたいになってるわね。

現実は悲惨である。

…結果。

「あっ、ゲーム終わった…」

「…」

何も得ることは出来ず、ゲーム終了。

あまりにも酷いから、逆にリプレイを保存したくなるゲームだったわ。
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