星と月と恋の話
「今年も瑠璃華さんと一緒で良かったよ。別のクラスになったら切なかった」

「大丈夫です。私としても『人間交流プログラム』の為、奏さんと別のクラスになるのは都合が悪かったので、こっそりとアンドロイドの忖度パワーを働かせて、無理矢理同じクラスにしました」

「…あれ?もしかして瑠璃華さん、違法なことしてないよね?あれ?大丈夫だよね?」

「…」

「…何で黙るの?大丈夫だよね…!?」

…こっそり聞いてたら、何だか不穏な会話が聞こえてきたんだけど。

…大丈夫なのかしら。

アンドロイドの忖度パワーって何なんだろう…。

と、思って見ていると。

「ん?」

あ、やば。

久露花さんと、目が合ってしまった。

慌てて目を逸らしたけど、失礼だよね。

「あなた方は見覚えがあります。私の記憶が正しければ、昨年度、1月の某日にゲームセンターでお会いしましたね?」

あ、話しかけられちゃった…。

覚えててくれたんだね。

「う、うん…。久し振り…」

「お久し振りです。今年は同じクラスのようですね」

「そ、そうみたいね」

「これも何かの縁というものです。出来ることなら、私の『人間交流プログラム』に貢献してくださることを期待しています」

に、人間…何だって?

噂には聞いていたけど、やっぱり中二病だなぁ…。

悪い人ではないんだろうけど。

「今年一年、どうぞ宜しくお願い致します」

「う、うん。こちらこそ宜しく」

握手を求められたので、私はそっと手を差し出した。

ぎゅっと握り返してくるその手は、普通の人と何ら変わりない。

久露花さんって、中二病だとか電波だとか言われて、散々馬鹿にされてた印象があるけど…。

こうして話してみると、確かにちょっとヘンテコなところはあるものの。

意外と普通に話せるのよね。

別に話が通じない訳でもないし、いきなり突拍子もないことを言う訳でもな、

「…さて、新しいクラスメイトへの挨拶も終えたことですし、そろそろ行きましょうか、奏さん」

「え?行くって、何処に?」

「故障していた西棟のエレベーターです」

「?何でそんなところに行くの?」

「直ったからです」

「えっ」

えっ。

これは、私も「えっ」だった。

あれ直ったんだ。ずっと壊れたままだったのに。
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