星と月と恋の話
「直ったの?」

「はい。問題なく動きますよ」

「へぇ…。春休みの間に、学校が業者を呼んで修理してくれたのかな」

「はい。琥珀(こはく)さんと二人で、深夜に学校に侵入しまして…。一週間ほどかけて直しました」

「…は?」

…は?

これは、私も「は?」だった。

「な、直した…?だ、誰が?」

「私と琥珀さんです」

琥珀さんって誰だろ。

そんな人、私達の学年にいたっけ?

「教師に確認してみたところ、来年度も故障したエレベーターを直す予定はないとのことで、どうしたら良いか二人で話し合ったのです。そして、学校が直してくれないなら、私達で勝手に直せば良いのではないか、という結論に辿り着きました」

「よく思いついたね、って言うか、よくそれで直ったね!?」

「大丈夫です。ちゃんと、二人共電気工事士の国家資格を取得しましたから」

「…何やってるの君達は…?」

「エレベーターの修理方法は、『Neo Sanctus Floralia』から『猿でも分かる!エレベーターの直し方』という本を借りてきて…」

「よくそんな本がこの世に…って、あぁもう。ツッコミどころが多過ぎて頭痛い…」

「では、早速直したばかりのエレベーターに乗ってみましょう。大丈夫、また壊れたとしても、私達資格持ちですから。すぐ修理します」

「…頼もしい限りだよ…」

…そのまま、二人は教室から出ていった。

多分、直った?直した?ばかりの、エレベーターを見に行ったと思われる。

…えぇっと。

突拍子もないことを…。…たまには言うみたいね。

「…あの方は、人外の類なんでしょうか?」

結月君が、ポツリと尋ねた。

「もしかしたらそうなのかもしれないわ…」

あの中二病設定も、あながち設定ではないのかもしれない…。

…と、思っていると。

「あ、星ちゃんじゃん!」

「え?湯野(ゆの)っち?」

背後から話しかけられて、私はびっくりして振り返った。

そこにいたのは、中三のとき同じクラスだった私の友達。

湯野っちが、驚いた顔でこちらを見つめていた。

おぉ。これはなんて偶然だ。
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