星と月と恋の話
「最後の罰ゲームはさ、先に決めておかねぇ?」

と、仲間の一人が言った。
 
先に決めておく?順位が決まってからじゃなくて?

それはそれで、面白いかも。

「何々?何の罰ゲームにするの?」

「そりゃあ勿論、定番のアレだよ」

にやり、と彼は笑った。

人の悪そうな笑顔だ。

「定番のアレって?」

「クラスで一番モテない奴にコクる」

それを聞いて、私は思わずびっくりしてしまった。

確かに定番だけど、実際に行っているのは見たことがない。

普段なら、こんな悪ふざけを思いついても、口に出すことはない。

でも、皆これまでの罰ゲームで調子に乗っていた。

だから。

「うっそー、マジでやるの〜?」

「良いじゃん、面白そう」

「ようは負けなきゃ良いんだろ?」

皆、半信半疑の様子で、しかし反対はしなかった。

私でさえ、その提案を面白がっていた。

私は歌が上手いから、負けるはずがないという自惚れもあった。

「ちなみに、それ誰にコクるの?」

女友達の一人が聞いた。

私達は、女子が三人、男子が二人の5人グループだ。

告白する相手は、性別によって変わるだろう。

「じゃあ、男子は久露花(くろばな)さんにしようよ。面白そうじゃない?」

もう一人の女友達が、そう提案した。

久露花さん…。確か。

「Aクラスに転入してきた子だっけ?」

「そ。面白いでしょ?」

確かに、面白いかも。

その久露花さんという女の子、凄い美人だけど。

でも、転校初日から自分のことをアンドロイドだと言ったり、イタい発言ばっかりしてる重度の中二病らしい。

そんな女の子に告白するなんて、正気の沙汰じゃない。

「あれ?でも久露花さんって、彼氏いるんじゃないの?いっつも男子と一緒にいるじゃん」

え、そうなの?

「ただの友達だろ?」

「知らないけど…」

「まぁ良いじゃん、どっちでも。罰ゲームでコクるなら、久露花さん以上の『適任』はいないでしょ」

と、女友達はにやりと笑った。

まぁ、重度の中二病患者と付き合いたい人なんて、普通いないもんね。

罰ゲームにはもってこいだ。

「じゃあ、女子が負けたら誰にコクるの?」

「それは勿論、うちのクラスの三珠(みたま)クンだろ」

言い出しっぺの男友達が、にやにやしながらそう言った。

血の気が引くかと思った。
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