星と月と恋の話
…と、そんな訳で。

二人でアンケート係、宜しく。

ダンスグループが、楽しげに楽曲を決めている間。

私は結月君と二人で、机を向かい合わせて。

アンケート用紙の準備を始めていた。

…何が嬉しくて、こんなことに。

「アンケートって…どんなこと聞けば良いんですかね。満足度とか…?」

「…そうね…」

テンションが上がらない。

全ッ然、テンションが上がらないよ。

向こうで真菜や海咲や正樹が、キャッキャしながらダンスの話してるのがチラチラ聞こえてくるから、余計に。

あー、私もあっちに混ざれたら…どんなに良かったか…。

寄りにも寄って、何で結月君と二人なの…。

「質問項目は5つくらいにしましょうか…。あんまり質問項目が多いと、面倒臭がってアンケートに協力してくれないかもしれませんし」

「…うん、そうね…」

「5つ目は、空欄にして…何か意見のある人だけ書いてもらうことにして…」

「…うん…」

「最初の4問は…満足度を間隔尺度で聞いて…。点数で表したら、分かりやすいんじゃないでしょうか」

「…そうね…」

「5段階で表すのは…多いですかね。3段階にしましょうか。満足3点、普通2点、不満1点、みたいな感じで…」

「…んー…」

「…」

ずっと、結月君の話に生返事を返していると。

結月君はいきなり無言になって。

私のことを、じっと見つめていた。

しばらく、その視線に気づかなかった。

ふと前を見たら、結月君の視線に気づいてビクッとした。

びっくりした。

な、何でこっち見てるの。

「ど、どうしたの?」

「…つまらないですか?」

は?

「つまらないですか、僕と二人でアンケート係なんて…。やっぱり、ダンスのグループに入りたかったんですよね」

やば、見透かされてる。

そ、そういう言い方されると…何だか私が我儘みたいじゃない。

「そ、そんなことないよ。ちょっと…ボーッとしてただけだから」

と、一生懸命否定してみる。

が。

結月君は、ちゃんと分かっているようで。

「でも、誰かがやらなきゃならない仕事ですから。今年は仕方ないと思って、与えられた役割をちゃんとこなしましょう」

「…はい…」

…説き伏せられちゃった。

君って、本当真面目だなぁ…。

アンケート係なんてつまんないよね、適当にやってしまおう、と言ってもバチは当たらないと思うよ。

…とはいえ。

結月君の場合、むしろダンスグループより、アンケート係みたいな裏方仕事の方が好きなのかも。

結月君がダンスなんて、全然似合わないもんね…。
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