星と月と恋の話
そんな訳で、放課後。

私は結月君と一緒に、先生にパソコン室使用の許可をもらい。

その足でパソコン室にやって来た。

学校のパソコン室なんて、授業でしか使わないから何だか新鮮。

しかし、結月君は手慣れた様子で。

「あ、星ちゃんさん、そのパソコンはちょっと壊れてるので」

「え?」

パソコン室に入って、一番手前のパソコンを立ち上げようと思ったら、結月君に止められた。

え?これ壊れてるの?

「繋がるのが凄く遅いときがあるんです。その隣のパソコンなら、ちゃんと動くので。そちらを立ち上げましょう」

「あ、うん…分かった」

たまにあるよね、学校のパソコン室って。

自分の使ってるパソコンだけ、妙に動作が鈍いとき。

人間に個人差があるように、パソコンにも個体差みたいなのがあるのかもしれない。

って言うか、壊れてるんだっけ?

「よく知ってるね、これが壊れてるなんて…」

私、どのパソコンの動作が早いとか遅いとか、そんなの全然覚えてないよ。

「あぁ、はい。僕、自宅にパソコンがないので…」

「…」

「調べ物があるときは、いつもパソコン室を借りてるんです。それで…」

…成程。

そういえば、結月君の家ってパソコンないんだっけ…。

それどころか、スマホすら持ってないんだったよね。

ネットを使いたかったら、学校のパソコンしか選択肢がないなんて…私には耐えられないよ。

「結月君の家って、厳しいんだね…」

門限とかも、ちゃんと決まってるのかな。

しかし。

「家が厳しいって言うか…そこまでパソコンが必要だと思わないので」

「…」

「生きていくのに必要なものがあれば、それで良いです。パソコンなんて学校に来れば借りられますしね」

よくそういうことを、さらりと言えると思うよ。

今日日、ネットのない生活なんてなかなか難しいよ。

私には有り得ない感覚だ。

「よし、立ち上がった…。じゃあ、始めましょうか」

「あ、うん…」

私は、結月君の隣の席に腰掛けた。
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