星と月と恋の話
…ところで、素朴な疑問なんだけど。

パソコンで、どうやってアンケート用紙を作れば良いの?

何だっけ、その…メモ帳とかに下書きして、それを印刷すれば良いんだろうか。

それとも、専用ソフトに打ち込んで作るんだっけ?

なんか、授業でちらっと習ったような気はするんだけど…。

パソコンの授業って、先生の説明の合間にこっそりネットを開いて、動画を見たりしてる記憶しかない。

なんて不真面目な生徒なんだ。

私が自分の不真面目さを呪っている、その間に。

結月君は、手早く表計算ソフトを立ち上げていた。

はやっ。

「それで作るの?」

「?はい…。そうじゃないんですか?」

ごめん、私よく分かってない。

「前、パソコンの授業で似たようなことしたじゃないですか。調査用紙を作る作業…。あのときは印刷まではしませんでしたけど」

「…」

「あれと同じことをすれば良いんですよね?」

…結月君。

君ほどの模範生徒を、私は見たことがないよ。

偉過ぎる。

パソコンの授業の間中、真菜達とキャッキャしながらネットを開いて遊んでいた私とは、大違い。

って言うか、パソコンを持ってないはずの結月君の方が、パソコン作業に詳しいなんて。

つまりそれって、私はパソコンを持ってはいても、ネットサーフィンして遊ぶ以外に使ってない、ってことだよね。

こういうネット以外の作業については、からっきしなんだもん。

むしろ、授業で得た知識をしっかり覚えていて、こういうときに役立てることが出来てる結月君の方が。

パソコンを持ってない結月君の方が、百倍は偉い。

ねぇ。

今のところ、このアンケート係の作業に、私って必要?

全部結月君がやっちゃってるじゃん。

私、超役立たずみたいになってる。

恥ずかしい。

私にも…せめて一つでも、何か活躍の機会が欲しい…。

これじゃあ、全部結月君に押し付けたみたいじゃない。

すると。

はい、あとはこれで…質問項目を入力するだけですね。

うわー、凄い。

ちょっと目を離した隙に、アンケート用紙のフォーマットが完成している。

それって、自分で手打ちしたんだよね?

まさか、学校のパソコンのソフトに、事前にアンケート調査のフォーマットが用意されていた訳ではあるまい。

ってことは、結月君が自分で打って、作ったのだ。

強い。強過ぎるぞ結月君。

向かうところ、君に敵なし、

「えぇと…。だ、い…いち、もん…」

「…」

いざ、質問項目を入力する段階になって。

結月君は、キーボードをポチポチ叩き始めた。

…人差し指一本で。

…指一本でキーボード打つ人、小学生以外で初めて見た。

いや、今日日小学生だって、もうちょっと手際よくキーボードを扱えると思う。
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