星と月と恋の話
…そりゃ、私だってたまにあるよ?

今月新作のコスメを買い過ぎたり、ライブに行ってグッズを買いまくって、金欠になったり。

「あー、今月ピンチだ〜」と真菜達に愚痴ることもしばしば。

そんなときは、セルフ質素倹約令とばかりに。

学校帰りのコンビニスイーツを我慢したり、フリマアプリで要らないものを売って小金を作ったり、遊びに行く回数を減らしたり。

そんな工夫をして、来月まで細々と暮らすの。

あるいは、お母さんに追加のお小遣いを無心することもある。

そんなときお母さんは、「全くもう…」とか言いながら。

お皿洗いや風呂掃除、庭の草むしりと引き換えに、追加のお小遣いを渡してくれる。

そういうことは、私だってたまにあるよ?

…あるけど。

でも、結月君の場合…。

そういうことじゃない…ん、だよね?この言い方だと…。

今月金欠だから無理、って訳じゃなくて…。

「え、と…それは…来月になっても無理ってこと?今月ピンチだから、じゃなくて?」

「はい」

「お小遣いもらってないの?」

我ながら、結構失礼なことを聞いてしまった。

つい口をついて出てしまった。

けど、結月君は涼しい顔で答えた。

「そうですね。必要なものがあるときは、その都度申告してから買う家庭なので」

「…」

…マジか。

毎月、月が変われば自動的に定額でお小遣いがもらえる家庭で育った私には、考えられない。

欲しいものがあるとき、いちいち親に頼まなきゃならないってこと?

めちゃくちゃ面倒じゃん。

ふいっと立ち寄ったお店で、衝動買いしたくなったときとかどうするんだろう。

いちいち家に帰って、親に申告しなきゃならないの?

それじゃあ、もう衝動買いじゃないよ。計画的な買い物だよ。

私には、とても耐えられそうにない。

「正直うちは、あまり余裕がある訳じゃないので。僕が遊びに行く為だけに、余計な出費をさせたくはないんです」

「…」

恥ずかしいことではないとばかりに、あまりにさらっと言われて。

私は呆気に取られてしまった。

それってつまり、要するに。

「うちは貧乏で、お小遣いももらってないから、お金のかかる遊びは出来ません」って宣言してるようなもの。

バイトをしようにも、うちの学校はバイト禁止で、バレたら厄介なことになる。

しかし、そういうことを恥ずかしがらず、隠すこともなく、きっぱり言ってしまえるのは凄いと思う。
 
潔いなって。

私だったら多分、恥ずかしくてそんなこと知り合いには言えない。

でも…そうね。

それならそうと、いっそはっきり伝えてくれた方が…コソコソ隠さずに済むから良いのかも…。
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