星と月と恋の話
そして、迎えた週末。

私は、人生初のハイキングデートに臨もうとしていた。

今度は、服装に悩むということはそんなになかった。

やっぱりハイキングなんだから、動きやすい服が良いよね。

普段よりは薄着をした。

だって動き回るんだから、厚着してたらきっと暑くなるだろうと思って。

あとは、日差しよけに帽子を被るとして…。

で、服装はそれで良いんだけど。

「靴、どうしよっかな…」

私は玄関の靴箱を開けて、履いていく靴について考えた。

歩きに行くんだから、やっぱり、歩きやすい靴が良いよね。

スニーカーとか。

でも、前回も私、スニーカー履いていったんだよね。

しかも、白いスニーカー。

これは履き慣れてるし、お気に入りでもあるんだけど。

山を歩くんだから、もしかして、白いスニーカーだと汚れてしまうんじゃないか、と心配になったのだ。

折角のお気に入りの靴を、泥で汚したくはなかった。

じゃあ、別の靴にしよっか…。

「お、そうだ」

私は、真新しい靴箱に手を伸ばした。

そこには先々月買った、おニューのスニーカーが入っていた。

こちらは茶色なので、万が一泥がはねても、汚れはそんなに気にならない。

これまで、買っただけで一度も履いていなかった。

いやね、このスニーカーをお店で見つけたとき。

一目惚れで「欲しい!」と思って、それこそ衝動買いしたんだけど。

家に持ち帰ってみると、自分でもびっくりするほど熱が冷めちゃって。

今履いてるのもあるし、これはまだ良いかとばかりに、靴箱の肥やしにしてしまっていた。

そういうことをするから、私は金欠になる。

少しは結月君みたいに、計画的になるべきだね。

とはいえ、今回は良い機会だ。

今こそ、この新品スニーカーを下ろすときでは?

丁度良いや。

じゃ、これを履いていこうっと。

私は新しいスニーカーに足を入れた。

まだ新品のせいか、ちょっとキツかった。

それに、衝動買いをした結果、試し履きもせずに買ったせいか。

いざ足を入れてみると、ちょっと小さいのか、爪先がキツいように感じた。

しまったな。

もうワンサイズ大きいのにしておけば良かったかな?

靴って、たまに表示のサイズよりちょっと小さく感じたり、逆に大きく感じることってあるよね。

履いてみなければ分からない。

歩き出してから、足が痛くなるかなと思って。

やっぱり別の靴に履き替えに帰ろうか、と少し考えた。

でも。

今から家に帰ってたら、待ち合わせ時間に遅れるかもしれない。

まぁ、良いや。

まだ新しいから、足に慣れてないだけだ。

しばらく歩いてたら、柔らかくなって、足に合うようになるだろう。

と、軽く考えていた。

その私の考えの甘さが、後にあんな事態を引き起こすことになるとも知らず。
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