星と月と恋の話
ハイキングコースのある○○町までは、バスで行った。
 
結構遠いのかなと思っていたら、精々15分程度、バスに揺られていると。

あっという間に、目的地に到着。

紅葉のシーズンだからか、多くの人がハイキングに臨もうとしていた。

へー…。案外人多いんだ。

…ところで。

「私、ハイキングなんて初めてなんだけど…」

今更だよね。

「ここのコースって、初心者でも大丈夫なの?」

いえ、上級者向けです、とか言われたら。

悪いけど、私は途中で離脱することを先に宣言しておく。

私運動部に入ってる癖に、そんなに体力ないから。

なんちゃって運動部だから。

しかし、結月君はそこもちゃんと考えてくれていた。

「中級者以上の方向けのコースもありますけど、ちゃんと初心者コースもありますよ。今日はそちらに行きましょう」

あ、良かった。

それなら安心だね。

「結月君は、上級者コースに登ったことあるの?」

「お恥ずかしながら…。挑戦してみたことはあるんですが、山頂まで辿り着けず」

と、結月君はちょっと恥ずかしそうに言った。

それは恥ずかしがるんだ。

「八合目辺りでギブアップして、そのまま下山して…。それ以来、挑戦していません」

へぇ〜。

初志貫徹!って感じの結月君でも、そういうことってあるんだ。

ちょっと意外。

「でも、挑戦するだけ偉いじゃん」

それに、八合目までは登れたんでしょ?

ハイキング未経験の私からしたら、それだけでも凄いことだと思うよ。

ほぼ上級者と言っても、過言ではない。

「そ、そうですか?」

「うん。偉い偉い」

同じ男でも、正樹や隆盛にはない度胸だよ。

あの二人だったら、多分今頃、ゲームセンターでレースゲームに夢中だからさ。

それを思えば、ハイキングに挑戦してる結月君って凄いよね。

「意外とアクティブなんだよね、結月君って」

結月君と付き合ってみるまでは。

モサッとして、地味で、自宅に引きこもっていそうなイメージしかなかった。正直なところ。

でもこうしてみると、意外とこの人、よく動くんだよ。

文化祭のアンケート用紙の作成だって、率先して動いてたもんね。

自然公園で歩いたり、こうしてハイキングして紅葉を見に来たり。

意外とアクティブなんだ。

「スポーツとか好きなの?」
 
「嫌いではないですよ。得意ってほどではないですけど…」

「ふぅん?走るの速そうだけど」

「あ、はい。走るのは速いんですよ、比較的…。50メートル走、6秒台なんで…」

「本当に速いね!?」

やっぱりスポーツ得意なんじゃん。

それだけ足速くて、スポーツ苦手とは言わせないわよ。

50メートル走、9秒を切れたことに喜んでる私からしたら。

君はチーターみたいなものだ。
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