星と月と恋の話
そんな会話をしながら、歩くこと15分程。

景色が、段々秋らしくなってきた。

「見えてきましたね、紅葉…」

「う、うん…そうだね」

「今年の紅葉は綺麗ですね。紅葉って、同じ場所でも、毎年色が違って見えるんです。その年の気温とか、見に来るタイミングのせいでもあるんでしょうけど」

「う、うん」

「今年は去年よりも綺麗ですよ。これほど綺麗な紅葉は、何年ぶりでしょうか」

「そ、そっかー…。それは凄いね…」

私は、さっきから。

結月君との会話を、ずっと生返事で返していた。

…結月君との会話がつまらないから?

いや、そうじゃない。

結月君の言う通り、さっきから紅葉がどんどん綺麗になってきて感嘆してるんだけど。

私はそれよりも、気を取られていることがあるのだ。

「山頂から見たら、きっと凄く綺麗でしょうね」

「そ、そうだね…」

「あ、そうだ。この先にイチョウ並木があって。そっちも綺麗なんですよ」

「そ、それは…楽しみだね…」

いつもより饒舌な結月君が、新鮮に見える。

けど、やっぱり私はそれどころじゃない。

色々と、それどころじゃないんだよ。

私は、ぶるっと身体を震わせた。

…寒い。

さっきから私、ずっと震えながら歩いてる。

完全に失敗だった。

歩いていれば暑くなるだろうと思って、薄着してきたのが災いした。

山の中に入ると、途端に気温がぐっと下がった気がする。

山って、こんなに寒いの?

よく見たら、周りの人は皆、結月君と同じく厚着をしている。

中には、真冬に着るような分厚いコートを着ている人までいる。

しかし、それが全く不思議じゃないほどに寒い。

歩いてたら暖かくなるなんて、軽く考えていた。

そして、気温に加えてもう一つ。

私には気になることがあった。

何かと言うと、靴だ。足元だ。

やっぱり履き替えてくれば良かった。

猛烈に、そのことを後悔していた。

本格的に歩き始めて、およそ10足らずで。

靴ずれを起こした爪先が、猛烈に痛み出したのだ。
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