星と月と恋の話
…と、そんな話で、気を紛らわせたは良いものの。

再び歩き始めると、やっぱりまた爪先が痛くなってきた。

うぅ。ちょっと立ち止まって休んだお陰で、少し痛みが引いてたんだけど…。

あれは一時的なもので、やっぱり歩き出すとまた痛み出した。

そりゃそうだよね。手当てした訳じゃないんだし…。

寒さは改善されたんだし、靴ずれの痛みだけなら何とか耐えられる…と。

思いながら、我慢して歩いてはみたものの。

山頂に近づくにつれ、段々上り坂が急になってきて。

それに伴って、靴ずれの痛みも増してきた。

山頂はまだなんだろうか…?

そろそろ限界が近い…。

こうなってくると、もう景色を楽しむどころじゃない。

「ね、ねぇ…結月君」

私は、恐る恐る尋ねてみることにした。

「はい?」

「山頂はまだなのかな…?」

「えぇと…あと15分くらいですね」

えぇ…。まだ15分もあるの。

私にとっては、果てしなく長い道のり。

山頂まで辿り着いたとしても、まだ帰り道があるんだよね…?

うぅ…耐えられるだろうか?

もういっそ、裸足で歩きたい衝動に駆られてきた。

「疲れました?休みます?」

「う、うん…。ちょっと休みたいかな…」

「じゃ、そこに腰掛けて休みましょうか」

結月君は、登山道の途中にある、ちょっとした休憩所みたいなところを指差した。

はぁ、良かった。

休み休みなら、何とか山頂まで耐えられそうだ。

問題は帰り道だよね。

帰りは下り道だから、登るときよりはマシだと信じたい…。
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