ガキ大将と猫(溶け合う煙 side story)

ビールと砂肝の後は、武藤先輩のオススメだと言う料理をいくつか頼んだ。

お酒が進むにつれ、武藤先輩の口調が優しくなる。いや、ただ呂律が回っていないだけ?なのか?

始めの方は割と仕事の話をしていたが、後半は趣味や好きな映画の話などで盛り上がった。
意外なことに、海より山が好きだったり、目玉焼きにはソースをかけるなど好みは合っていた。

話題のほとんどが、どうでもよい下らない内容なのだが、一緒に話をしていると楽しいし、落ち着く。
今まで勝手に毛嫌いしていたのが申し訳なく感じるほどだった。

「武藤先輩、そろそろ電車がなくなりそうなので…」

「わかった。マスター、締めちゃってー!」

駅まで2人で並んで歩いたが、居酒屋での時間がとても心地よく、好みも合うのがわかったせいなのか、まったく嫌ではなかった。

ここに来るまでは先輩と関わったことを『厄日』と思っていたのに…。

むしろ、今日は彼と一緒にいて楽しいと思った。こんなのは入社して初めてだった。
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