童貞を奪った責任
――――――新年が明けて初めての出社日。
詠斗に車で送ってもらう道中、害虫避けと要して付けられたキスマークは出来立てホヤホヤ、新鮮そのもの。
腰が砕けてしまうくらいの熱く濃厚なキスで、顔は火照りが冷めやらない。
「伊丹さん!!お久しぶりですね。」
「伊丹、あんまり彼氏を心配させるんじゃないぞ~。」
「今日もラブラブ出社ですか。」
オフィスに辿り着くなり、色んな同僚から声が掛かると、それを受け流すことで精一杯だった。
私の彼氏が超絶美形男子だと言う事は、私が居ない間で広がっており、事の要因を辿れば....。
「有給申請したでしょ?会社までアナタの動向を知らないか尋ねに来たのよ。」
態々私の職場にやって来て、上司にしか教えていなかった“実家帰省”は、まんまとバラされてしまっていた。
個人情報って知ってます?と、その話を耳に挟んだ直後、上司を睨みつければ、「だって、凄い剣幕だったから....」ともじもじしだして、いい歳したオッサンが何乙女みたいな行動取ってんだ!!気持ち悪い....と呆れてしまった。
そして.....
「杏ちゃん久々だね。彼氏と仲良くしてる?」
偶然タイミングよくやって来たケンちゃんにも、質問攻めに遭い....
「なんか玉の輿なんでしょ?」と言われたのは、他でもない、詠斗が私の会社に自分の名刺を置いて行ったらしく、
風の噂で、彼が大きな会社の社長という事が、ケンちゃんの会社の方でも騒がれていたらしい。
「なんか、凄いよね。金も地位も持ち合わせてて、それに初めてまでもを奪っちゃった感想は?」
それを聞かれたからには、間違いなく思うことはある。
「嗚呼、逃げたい....」