童貞を奪った責任




 時は過ぎ、二人で沢山の思い出を作ってきた。

ーーーーそれは私の27回目の誕生日を迎えた日の事である。










 詠斗は今日の為にと、最高級ディナーとホテルの最上階のスイートルームを予約してくれたらしい。



 あんまり期待はしてないけれど、今年のプレゼントは何が貰えるのかな。

 去年の誕生日はふざけてるのか、姐さん専用と称した護身用の短刀を貰ったっけな。ほんとあれは意味が分からなかった。まあ逆にじわじわ来て面白いチョイスだったけどね。

 そして今年は?とワクワクしていると....




 突如レストランのフロア内の照明が落とされて、テーブルの上に置かれた蝋燭の灯火だけが、私達の姿だけを薄らと照らす。



 アクシデントだと思って動揺していた私とは裏腹に、自棄に冷静な詠斗は椅子を引いて立ち上がった。




 真反対に居た筈の彼が、私の側まで歩み寄ると、床に肩膝を着く。

 私の顔を見上げながら、手元に収まる小さな箱を開いた彼は....





「結婚しよう.....杏。」









 思わず、感極まって溢れ出た涙。今年もヤクザ関連の面白グッズか何かだと思っていたのに....



 ある意味期待外れの嬉しいプレゼントは、ダイヤモンドが埋められた煌びやかな指輪。







 泣き出してしまい一向に返事をしない私に、




「俺の童貞を奪った責任を取ってください。の方が良かったか?」なんてくしゃりと笑う詠斗。











 思わずつられて笑って緊張感が解れた私は.....














「ええ、喜んで。」





 詠斗に向かって左手を差し出した。













< 103 / 152 >

この作品をシェア

pagetop