童貞を奪った責任
時は過ぎ、二人で沢山の思い出を作ってきた。
ーーーーそれは私の27回目の誕生日を迎えた日の事である。
詠斗は今日の為にと、最高級ディナーとホテルの最上階のスイートルームを予約してくれたらしい。
あんまり期待はしてないけれど、今年のプレゼントは何が貰えるのかな。
去年の誕生日はふざけてるのか、姐さん専用と称した護身用の短刀を貰ったっけな。ほんとあれは意味が分からなかった。まあ逆にじわじわ来て面白いチョイスだったけどね。
そして今年は?とワクワクしていると....
突如レストランのフロア内の照明が落とされて、テーブルの上に置かれた蝋燭の灯火だけが、私達の姿だけを薄らと照らす。
アクシデントだと思って動揺していた私とは裏腹に、自棄に冷静な詠斗は椅子を引いて立ち上がった。
真反対に居た筈の彼が、私の側まで歩み寄ると、床に肩膝を着く。
私の顔を見上げながら、手元に収まる小さな箱を開いた彼は....
「結婚しよう.....杏。」
思わず、感極まって溢れ出た涙。今年もヤクザ関連の面白グッズか何かだと思っていたのに....
ある意味期待外れの嬉しいプレゼントは、ダイヤモンドが埋められた煌びやかな指輪。
泣き出してしまい一向に返事をしない私に、
「俺の童貞を奪った責任を取ってください。の方が良かったか?」なんてくしゃりと笑う詠斗。
思わずつられて笑って緊張感が解れた私は.....
「ええ、喜んで。」
詠斗に向かって左手を差し出した。