童貞を奪った責任


 ただ、弟のオンナに手を出す兄ってのも最低だろう?


 だけど、これはただの口実でしかない。


「杏ちゃん杏ちゃん。ねえねえ聞いてよ。ハチってば、俺の事平気で殴るの。」

「それは七海さんが詠斗にちょっかい掛けるからだと....。」


 俺が杏ちゃんに絡むのは、彼女を本気で落としたいってのもあるけれど、本来の目的は、弟との溝を埋めたいってのもあるんだよね。


 本当なら、俺が詠斗の立ち位置に居るはずだったんだ。




「お前、自分が何したか分かってんのか?」



 それはほんの数年前に遡る。


 織田家の家系は、代々ヤクザの族長を務める役割を果たしてきた。


 名前の由来は、生まれた順番で決まる。


 俺の親父は、六代目になるべく数字の六を取り入れ、そして親父の跡を継ぐ筈だった長男の俺は、七を取り入れられた。


 だがしかし、誤算というか....六代目から双子が生まれちまったという点だ。


「後継の話は白紙に戻す。じゃなきゃ下の者に示しがつかねー。」


 俺は自分の立場を弁えていなかったらしい。



 まあ、ずっと遊び人の様に裏で過ごしていたからバチが当たったんだと思う。



 
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