童貞を奪った責任


 それから直ぐに俺は山田組から去る事になった。


 と、言ってはみても....




「七海さん、なんでクラブに集金に行ったはずなのに、まんま全額使い込んでんだ?」


 俺が辿り着いた先は、山田組の傘下に位置する組である。

 組織図では、中堅よりちょいと下に位置する組は、上納金集めの為に、キャバレーやクラブなどにみかじめ料を集金する様な役割を担う。


 山田組という、裏じゃトップブランドを持つ組の傘下になると、そりゃ規模も膨大な訳ですよ。


「だって〜、ママさんが新人入れたって言うから〜。」

「だって。じゃないです!どうすんすか、ノルマまで足りないっすよ。」

「大丈夫!そこはなんとかなるさ〜。」



 能天気。この言葉は、俺の為に用意されたと言っても過言ではない。


 組を移ってから初めて知り得た組織の成り立ち。

 役割に仕事内容。ずっと親の脛を齧っていたのだと思い知らされる。俺はどこぞやのアホ御曹司か‼︎まあヤクザですけどね。




「やっほーハチ〜。ちょーっとばかしお願いが....。」


「聞かねーよ。」

「こらこら〜。お兄ちゃんのお願いを聞いてくれないなんて、冷たいっ!ね!杏ちゃん。」

「七海さんウザイ。私に話を振らないでください。」




 俺が退いてから、順番的な問題で詠斗が若頭に任命された。そして、あいつの経営戦略のお陰で、組は大分潤ったと思う。


 
 シノギだけでは、ヤクザ業界はやっていけないのだと、こいつは証明してみせた。



「ハチ!今月分の上納額足りないんだ‼︎」

「それなら、汗水流して働いてもらうしかねーな?」


 

 兄の尻拭いは、弟の仕事?いや待て待て、



「ボクちん、ひ弱だから無理。」

「あ"?なんか言ったか?」

「い、いえ。」



 この業界は、怖い人が多いけれど、詠斗なら任せられる。


 と言うか、俺の中で弟が一番恐ろしい存在なんだが....



 
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