童貞を奪った責任
番外編05
ヤクザの若頭様と結婚してから、早くも数か月が経ちました。
結婚式を身内だけで終わらせたのは、つい先週の事。
ハネムーンは、国内の温泉地でまったりと過ごしました。
高級お宿は一泊お一人様十万円からの場所らしく、至れり尽くせりの数日間を詠斗と共に過ごした。
「若頭の会社が経営している宿なんですよ。」と知らされたのは、帰ってきて翌日の朝食時のこと。
お宿の高級料理も良かったけれど、随分と慣れ親しんだ天竜さんのご飯も捨てがたい。
味噌汁を啜っていると、割烹着クマさんが教えてくれた。
「嗚呼、だからか~。」
「ホテル業は少ないですけど、旅館とかに参入するヤクザも少なくないですからね。」
彼の経営している会社に、私はそこまで興味が無いが為に、つい昨日まで泊まっていた宿が、実は旦那の所有物だったなんて....。知る由も無かった訳で、
だけど吃驚しないのは、何と無く察していたから。
チェックインの時から、宿の女将さんが無駄にへこへこしていたり、常に緊張感を纏わせている雰囲気は、素人目でも分かるくらいだった。
“社長が来てる”ってプレッシャーがあっただろうけれど、そこはプロ。
「さて、俺の奥さん。ハネムーン中に子作りしちゃう?」
詠斗は宿泊中、私を抱くことしか考えていなかった。
観光地巡りをして、温泉でまったりしたい私とは裏腹に、何処かれ構わずべたべた引っ付いて、処構わず私にキスをしてくる旦那。
「さっきから、男共が杏に厭らしい目で見てるのが気に入らねー。」
なんて、周囲の目に嫉妬する彼は可愛い。
でもね....貴方もその見た目の所為で、女の人が赤面して魅入ってるのを私は見てるんだから!!