童貞を奪った責任







「あの、本当に奥様でしょうか?」








 目の前の女性は、悪気は無さそうだけれど、私の姿を見て、疑うのも頷ける。




....私のバカ〜っ。どうしてこんな時に限ってキャラ物のTシャツ着て来ちゃってるのよ。



「....っはい。そうです。」


「少しお待ち頂けますか?確認致します。」




 恥ずかしさで、赤面する私を他所に、内線を掛けた受付嬢は、話し相手の所為なのか、徐々に顔面が蒼白していった....。



 通話が終わり、慌てた様子で、




「申し訳ございませんでした‼︎」



 エントランス中に木霊するぐらいの大声を張り上げて、頭を下げた女性に吃驚した。




 先程までの威圧的な態度は何処へやら。






 必死に謝る女性に対して、


「気にしないでください。」と返す私。





 暫くして、エレベーターから降りて来た旦那が、凄く不機嫌に顔を顰めながら、



「お疲れ様....っ。」



 一目散に、私を無視して女性の方へと向かう。





 そして、




「君、もう帰っていいよ。クビ。」



 
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