童貞を奪った責任
本日詠斗は、組の会合があるらしく、そのあとに飲み会になるとの事で、今晩の夕食は、住み込みの組員さん数人と共に過ごしている。
天竜さんが、お代わりの白飯をお茶碗一杯によそぎ、それを受け取るや否や口に掻き込む私は、まるで体育会系の若造の如く。
私ってこんなにフードファイターみたいな事出来たのか。今思えば、実家を離れてから食生活は乱れまくり、栄養は偏っていた。
つい先日、以前勤めていた会社の近くを通りかかった際に、同僚たちに挨拶に行ったら、
「織田さん肌艶良くなりましたね!!なんか活き活きしてるって感じです。」
「杏ちゃん久々だね~。ちょっと太った?」
肌艶が良くなった反面で、太った事を悟られた。
元セフレのけんちゃんに遭遇し、改めて自分が太ったと再認識してしまったのだ。
「天竜さん、私ダイエットしたいのに~、毎回のご飯が美味しすぎて、痩せれる気がしない~っ。」
「姐さんは元々細すぎだったんで、今ぐらいが丁度いいんですよ。女性はふくよかな方がタイプっす。」
「それは天竜さんの好みでしょ~。詠斗にデブって言われたら、立ち直れないよ。」
いつ言われるかヒヤヒヤしているのだ。
あの詠斗の事だから、『杏、お前太り過ぎ。デブになったな。』って真顔で詰め寄られそう。
「若頭の女性の好みなんか、知らないですけど....姐さん以外眼中に無い人なんですから、杏さんの容姿がどう変化しようとも、若頭は受け止めてくれると思いますけどね。」
「そんなの分かんないじゃんっ!!実は痩せてる女が好きだった。とか後出しで言われて、捨てられたらどうしよう。」
「大丈夫っす。もしも若頭が、姐さんを捨てようものなら、俺が姐さんを貰ってあげますんで。」
「....別れたら、嫁においで。」
家事全般出来る万能男は、嫁に欲しいものだ。
「ハハっ。嫁っすか。」
「そうそう。私が稼いでくるから、家の事は任せたよ。」
なんて、ありもしない妄想話に明け暮れて、気付けば満腹。
詠斗が帰ってくるかも知れないと、頑張って起きてたけど、眠さには勝てない。