童貞を奪った責任




 寝室で、電気を点けたまま転寝していると、もぞもぞ蠢く何か。




「――――んんっ。」


「ただいま。」


「あれ、帰ってきたの。」



 うっすら反目を開きながら、帰ってきた旦那に声を掛ける。


 私の寝巻の隙間から、腕を回した詠斗は、私の胸を揉んでいた。



「お酒臭いっ。」


「じじい共に飲まされた。」


「そうなのか、酔ってるなら、もう寝ようよ。私は眠い。」




 毎日の様にエッチしているものなのだから、ルーティーンの様なもので、偶には休憩も必要だと思うのだ。



 セックスレスで悩む夫婦は多いけど、私達夫婦の場合は、回数が異常な方で悩んでいる。




 ちゃっかり、子作りに励んじゃってるけど、未だ詠斗のものを受精する事は無く....子宝には恵まれない。



 どっちが悪いのかは不明だけれど、彼との子供が欲しいのは事実。


 だけど数撃てば授かるなんて、確率は上がるかも知れないけれど、その分薄まってしまうとかなんとか....。詳しい事は分からないけど、毎週の如くやって来る義兄の七海さんが、「俺のは優秀だよ。」って詠斗の代わりに一発で終わらせるから。とか余計なお世話を並べるのだ。





「杏、また胸おっきくなったな。」


「毎日揉まれてたら、そりゃおっきくもなるわ。」


「あと、身体の肉付きも良くなって、むちむちして柔らかい。」




―――――っ!!!!優しくだけれど、詠斗が私の腹の贅肉を摘まんで、咄嗟にその手を払い除けた。




「触らないでっ!!」


 大声を張り上げて、詠斗に背を向けながら自分の身体を抱き締めた。


 太った事がばれてしまった。恥ずかしくて、顔向け出来ない。




 
「お~い。杏ちゃん。お~い。」


「寝るからっ!!」



「んだよ。分かったよ。」



 明らかに冷たい態度をとって、彼の愛情を拒否してしまった。

 こうして拒むのは、初めてかもしれない。
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