童貞を奪った責任
頑張って、詠斗が帰ってくるまで寝ないようにしても、どうも睡魔が訪れる。
満腹ってやつ?気づいたら朝になっていて、絶望感で満たされるのだ。
どうにかこうにか、会社に乗り込もうとしたら、車を回せる人員は、みんな私に『忙しいので、すみません。』と言う。
もうこれ、ここまで来たら....私、詠斗に捨てられる系?
たった一度、太った身体で抱かれたくなかったから、拒否したら。
もうお前の顔なんか、見たくない。なんて言われたら、立ち直れない。
「――――チャオっ。杏ちゃん。ついに破局!?」
どこからか事態を聴きつけてきたであろう義理のお兄様こと七海さんは、詠斗が居ない今がチャンスとばかりに、私を口説く。
「あんな冷血な男やめて、俺の胸に飛び込んできなよ。」
「詠斗は、七海さんよりも数百倍優しいですから!!」
「待って、それは無いって。」
「七海さんに優しくされた事今まで一度だって無いですからね。」
「.....嗚呼、確かに。」
自問自答を繰り返し、記憶を呼び覚ます七海さん。
ずっと破廉恥な発言と、口説き文句と、お邪魔虫みたいな行動ばかりとって来た彼は、正直に言えば....
「詠斗と同じ顔な癖して、七海さんは打ん殴りたくなります。」
「酷っ!!」
はっきり言ってしまえば、この男は双子の癖して、性格は正反対で....
でも、二人とも面倒くさい様な性格の持ち主だった。
だけど、人間恋に落ちた相手には、妥協してしまうものだ。
好きになってしまったのだから仕方ない。と言い聞かせ、詠斗を受け入れた。
でも、だからって、七海さんを受け入れる....旦那を裏切る様な行動は慎みたいものだ。