童貞を奪った責任
七海が仮で組長代理として就任をしてから、まだふた月と経過もしていなかった。
俺の双子の兄は、本当に出来が悪い。
....何度だって同じことを言える。
女遊びが激しい上に、家の権力というか山田組という立場を利用して私利私欲に生きる。
親父が言うに、七海の女遊びは、俺たちの“母親”に似たと言う。
会ったことの無い母親は、親父と結婚したくなくて逃げたらしい。
その話を聞かされたのは、俺だけ。
アバズレに身籠った俺たちは、簡単に捨てられた。
そして母親同様に、女を孕ませては泣き寝入りさせるを繰り返していた七海に天罰が降った。
「七海が、他所の組の女に手を出して孕ませたらしい。」
「....。(本当にろくでなしだ。)」
降格からの、傘下の組に移される事が決定した。
あいつは根っからの馬鹿で、社会に出て行った所で、露頭に迷うに決まっているからだ。
七代目になるべくして付けられた名前も今じゃ無意味。
仮と言えど、一度は長になった為に、八代目という立場が回って来ることになってしまった。
会社は上場して、利益を上げて急成長を遂げている最中の出来事だったのだ。
俺は継がない筈だったのだ。