童貞を奪った責任





 絶頂を越えると、疲れなのか達成感なのか、よく解らない感情に陥る。



 スッキリした?と問われれば、そうかもしれない。




 今までに感じたことの無い幸福感に満たされて、ついさっきまで感じていた負の感情など、忘れてしまうくらいに衝撃的だった。




 
 事後、直ぐに服を纏う女を余所に、俺は一人そんなことを考えていたのだ。




「今日はありがとう。...またね。」




 果たして、女の言う“またね”があるのか。意外にもあっさりと去って行った女。




 名前も連絡先も告げてはこなかった。



 それは即ち、俺と寝た事は、女の中で単なる一度きりの関係というものなのか....




 女は性欲を満たし、俺は幸福感を得た。




 俺の中で、何かが大きく変化したのだ。その実感が湧いて来るや否や、





「探したい女が居る....。」





 もう一度会えば、この気持ちの意味を理解する事が出来るのではないだろうか。





 初めて興味を惹かれた女は、俺の童貞を奪って逃げた。




 そして、数日後.....





 再び同じ地で、女と再会することとなる。




 女の素性を調べるのに、そこまで苦労は掛からなかった。

 だが、いざ会いたいという気持ちが募れば、出鼻を挫く様に忙しくなる。


 本当に偶然だったのだ....。




「触らないで!」


 杏の叫び声だと一瞬で理解する事が出来た。



 お前の声だって.....直ぐに分かったのだ。




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