童貞を奪った責任


 指定暴力団山田組の若頭だから、どうせ山田って苗字なんだろうと、とんだ勘違いしていたらしい。



「まあ、俺が八代目になる予定だから詠斗って名前なんだけどな。」


「そんな説明は要らん。てか人のプライベートに首突っ込まないでくれないかな。」


「そうはいかねーよ。てめぇの女の世話くらい出来なきゃ男が廃るってな。」



 なんの話よ....。ほんとこの男と喋ってると疲れる。黙ってればいい男なのに勿体無いな。


 どうやら私は、ぶっ飛んだヤバい男に目を付けられてしまったらしい。参った....。



 私達がラブホのフロントでひと悶着しているものだから、自動扉から入ってきたラブラブカップルが、強面二人を見た瞬間に急いで出てっいってしまったよ。



 営業妨害もいいとこだ。



「とりあえず帰りたいから、そこ退いてくれないかな。」


「送って行く。」


「結構です。てか、二度と私の前に現れるな!!」


「それは無理なお願いだな。」



 鞄を抱えて、山田もとい詠斗の横を通り過ぎようとすれば、二の腕を掴まれて引き寄せられた。


 嗚呼、まただ。煙草臭いし、鉄臭いんだよ....。


 掴んだ手を凝視すれば、拳は赤く爛れている。



「反社の人と関わっちゃいけないって、おじいちゃんの遺言だから、とりあえず消えてくれ。それで事は済む....。」


「お前の爺ちゃんまだ死んでねーだろ。」



 なぬ!?何故嘘がばれたのだ。もしかしてだけど....



 この男、私について色々調べ上げてるのでは?



―――――キモッ!!!寒気がするわ。



< 21 / 152 >

この作品をシェア

pagetop