童貞を奪った責任
指定暴力団山田組の若頭だから、どうせ山田って苗字なんだろうと、とんだ勘違いしていたらしい。
「まあ、俺が八代目になる予定だから詠斗って名前なんだけどな。」
「そんな説明は要らん。てか人のプライベートに首突っ込まないでくれないかな。」
「そうはいかねーよ。てめぇの女の世話くらい出来なきゃ男が廃るってな。」
なんの話よ....。ほんとこの男と喋ってると疲れる。黙ってればいい男なのに勿体無いな。
どうやら私は、ぶっ飛んだヤバい男に目を付けられてしまったらしい。参った....。
私達がラブホのフロントでひと悶着しているものだから、自動扉から入ってきたラブラブカップルが、強面二人を見た瞬間に急いで出てっいってしまったよ。
営業妨害もいいとこだ。
「とりあえず帰りたいから、そこ退いてくれないかな。」
「送って行く。」
「結構です。てか、二度と私の前に現れるな!!」
「それは無理なお願いだな。」
鞄を抱えて、山田もとい詠斗の横を通り過ぎようとすれば、二の腕を掴まれて引き寄せられた。
嗚呼、まただ。煙草臭いし、鉄臭いんだよ....。
掴んだ手を凝視すれば、拳は赤く爛れている。
「反社の人と関わっちゃいけないって、おじいちゃんの遺言だから、とりあえず消えてくれ。それで事は済む....。」
「お前の爺ちゃんまだ死んでねーだろ。」
なぬ!?何故嘘がばれたのだ。もしかしてだけど....
この男、私について色々調べ上げてるのでは?
―――――キモッ!!!寒気がするわ。