童貞を奪った責任






 ケンちゃんは取引先の営業マンで、たまにだが、私の勤め先の会社に顔を出すセフレ界のエースだ。


 
 いつもだったら訪問前に連絡を入れてくれるのだが、何を隠そう....



「まんまと囲い込まれたって訳ね~。メッセ送っても既読付かないし、可笑しいと思ったわ。」



 昨晩のお戯れの前、タイミング悪く響いた軽快な通知音。その後問答無用でスマホは奪われ、メッセージ内容を見た奴は、一層不機嫌オーラを出した。

 そして詠斗は、容赦なく私のスマホからセフレと思わしき男の連絡先を消し去ったのだ。


 それは見事に選別されて....



 あの時何故分かったのか、その線引きの仕方は不明である。(因みに、残った異性の連絡先は主に、仕事関係とお父さん。)




「まあその束縛彼氏の行動も理解出来ない訳じゃないよ。」


「―――え.....。」


「だって、俺の事しか見ないで・俺だけを考えて。って言ってる様なものじゃん。相当杏ちゃんの事が好きで好きで堪らないんだろうね。じゃなきゃ、彼氏居るのに浮気してる女を繋ぎ留めようとは思わないよ。」



――――愛されてるね。杏ちゃん。




 そう言いながら、ゆっくりと私の身体を引き離したケンちゃんは、「もし別れたら、また俺とも遊んでね。」と捨て台詞を吐きながら私の頭を撫でた。









 また一人、私を満たしてくれる都合の良い存在が離れていってしまった。






 まだちゃんと理解する事は出来ないけれど、ケンちゃんの核心を突く様な言葉を不覚にも意識する事となる。



 

『もう諦めろ。お前は俺のだ。』





 童貞を奪った落とし前はとんでもない方向に進んでしまってる気がするんだが?






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