童貞を奪った責任
終業時刻になり、重い腰を上げて向かう先は奴の居る車だ。
『流石に三日連ちゃんで同じ服はやめろよ?』
冷やかしてくる先輩方に嫌気がさす。
これから自宅に寄って、ちゃんと着替えを持ってくるもんね!と思いながらも、愛想笑いを浮かべながら受け流す。
こういう事に敏感なんだから、うちの社員さんたちは。本当こっ恥ずかしくてやになっちゃう。
そして事の張本人様は、本日も優雅に煙草を吹かしながら私を出迎えるのだ。
「ちんたら歩いてんじゃねーよ。早く乗れ、杏不足。キスさせろ!!」
運転手並びに、助手席の強面の存在なんぞ空気の様に扱う俺様は、人目を憚らず私の唇を奪うのだ。
「ちょっと、どこ触ってんのよ!!」
「どこって、杏のデッカイ乳。」
淫らなキスで意識をもってかれると、いつの間にやら服の隙間から侵入してきた詠斗の厭らしい手が私の乳房を包み込んでいた。
「――――お前着替えそれしか無いのか?」
「ええ、薄給独り暮らしのOLは洋服買うのも大変なのよ!!」
我が城、ヤサグレ荘前で停車するのは、場違いなフルスモークなセダン車。
旅行用の小さめの鞄に下着と洋服を数組だけ入れて戻ってみれば、そんな小言を突かれて....
勿論まだまだ服は持っているんだけど、長居するつもりが無いから最低限のものだけ持ってきたのは事実。
「なーんだ。男に買ってもらってる訳じゃないんだな。」
「生憎と物を受け取る趣味は無いわ。ーーー…情が湧いちゃう....。」
ぽろっと吐いた本音は、小さくて聞かれたかなんて分からない。