童貞を奪った責任




 うわっ誰よ。


 朝っぱらから組員のオッサンが扉一枚挟んで、漏れるのを我慢しているのではないかと思い、慌てて用を済ませて出てみれば....




「あ....っ、姐さん!?」



 随分と大きな図体で、真っ白な割烹着を身に纏った天竜さんが姿を現した。


 お互いに吃驚して、あわあわとし出す始末。



「おはようございます。」


 少し気不味くなり、挨拶をして通り過ぎようとすれば....



「顔色悪そうですけど大丈夫ですか?」



 なんて、私の体調を心配する天竜さんに、心身共に弱っている私にとっては、その一言が嬉しくて、ジンと目頭が熱くなった。


 だけどね割烹着姿が滑稽で、笑いを堪えるのに必死なのよ。


 この屋敷の料理担当だという天竜さんが、組員の為に早朝から仕込みを初めているのだと思えば、いつも美味しい料理を提供さえてもらえる事に感謝しなくてはならないな。と考えさせられた。




「毎月の事なので、気になさらないでください。」



 これ以上立ち上がって話をしているのも辛い。詠斗が居る寝室へと戻ろうと一歩踏み出そうとした時.....








―――――――「姐さん!!!!!」





 やはり貧血でぶっ倒れてしまったのだ。




 天竜さんの叫び声が聞こえ、床にぶつかった痛みまでは覚えている。



 そこから先、目を覚ませば、そこには無機質な空間が広がっていた。


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