童貞を奪った責任
「私が帰ってきて、嬉しかった?」
「ああ、そうだな。」
「このまま、あっちでの仕事辞めて、実家に帰ってくるって言ったらどうする?」
「別にいいんじゃないか。」
「でも、田舎で仕事探すのって大変だよね。」
「ああ、そうだな。」
「私もお父さんの仕事手伝おうかな。」
「やめとけ、都会に染まった小娘には無理だ。」
「え~。そういう事言っちゃう?私以外とタフだよ?」
「別に、好きな事をして過ごせばいいんじゃないか?」
「そうやって、甘やかすと、私は本当に両親の脛齧って生きる自堕落な人間になっちゃうよ。」
「ハハっ、それを言われちゃ、困るな。」
久々に、聞いた父の笑い声は、軽快で....
このまま同窓会に参加せずに、父とドライブをしていたいな。なんて思ってしまったのだ。
.....駅前に到着して、軽トラの窮屈な座席の所為で姿勢が可笑しなことになっていたが、ガソリンをケチらずに暖房をガンガンにしてくれた娘想いの優しい父にほっこりする。
決して、私が帰ってきた理由は問質さない。
私が傷ついて、環境を変えたくて、数年前に出て行ったきりだというのに....
外は氷点下、一気に凍り付きそうになる体温に吃驚しつつも、車から降りて、戻って行った父を見送る。
勇気をもらった私は一歩を踏み出した。