童貞を奪った責任
無事に同窓会の会場に辿り着くと、一足遅かったのか、店内は騒々しくなっており、恐る恐る入店してみれば、懐かしい顔ぶれに包まれていた。
ーーー「え、もしかして伊丹!?」
そう言って真っ先に、私の訪問に気が付いた同級生の男の声は、瞬く間にその場をシンとさせた。
その場に居た全員の視線が一挙に私の方へと向けられたのだ。
田舎町の地元メンバーなんて、都会に比べたら二十人ちょいがいいところ。
全員の顔と名前が一致しない私は、戸惑っていた。
当時は優磨の所為で、皆と接する事を阻害されて、彼等と過ごした記憶よりも、優磨との思い出の方が色濃く残る。
「久々じゃん!!益々綺麗になって....」
「突然参加してごめんね。」
「ううん。嬉しいよ!!」
男女比はざっくりと半々だけど、みんな仲が良さ気で、各テーブルに別れて座っているものの、他所の席の子に話しかける始末。
あっちこっちから、“元気だった?”と声を掛けられて、正直に嬉しかった。
突然と別れを告げずに消えた私を潔く迎えてくれる彼等に、ジンと目頭が熱くなる。
もしも、お前ダレ?みたいに忘れ去られてたらどうしよう。とか悪い予感がして、怖かったのだ。
暫く団欒と私が去った後の話を語りだした同級生たちを余所に、見渡す店内には優磨の姿は無く....。
「アイツ、杏ちゃんが居なくなって、反省したのか人が変わった様に、空虚な感じだったよ。」
「大学も地元を離れて、都会に行ったらしくってな。」
「同窓会も、気まずいのか参加したり、しなかったり...。」
彼の前から私が消えて、彼も彼なりに反省したのか、私と一緒の考えで地元には殆ど戻って来てはいないらしい。
今日の会も、一応は参加の意向の連絡を入れたらしいのだが、仕事が立て込んでいて行けない。との連絡が来たとか....
もしもこの場に居たらと思うと、きっと昔の記憶が蘇えり震えて周りに迷惑を掛けてしまっただろうから....良かった。と安堵の息を吐いた。