童貞を奪った責任


・ ・ ・




 


「いやまた~。お前も派手にやられたな。」



「マジで、ホントそれ!!骨は折れてっし、最悪だわ。」



「これから手術すんだろ?」



「そうなんだよ。ほら俺って、顔しか取り柄が無い訳じゃん?しっかり治さないと、勝ち目ないじゃん。」




「誰と勝負すんだよ。」



「.....詠斗だよ。アイツ今一人の女に夢中になっててさ、あの詠斗がよ!?」



「あれだろ?天竜から聞いた。」



「いやマジで、相手めっちゃ美人!!あの詠斗が頑なに、盗られない様にするもんだから、俺も意地になってたわ。」



「馬鹿も休み休みにしとけよ。幾ら弟と言えど、お前より彼奴の方が、格上だって、自分でも分かってるんだろう?」



「それ、親父が言う?俺も一応あんたのDNA受け継いでるんだけど。」



「お前は母親に似たんだ、きっと....。」








 とある病室でオペ時間を待つ男は、無精髭を生やした貫禄のある男を目の前に、悪態を吐いた。



 痛々しく巻かれた顔面の包帯には、若干に 滲んだ赤黒い血が付着しており、その所為で口呼吸を余儀なくされた男は鼻声である。




 
「俺、御袋に会った事ねーから分かんねーし。」



「これだけは言えるな....。お前に似て、色んな男を食い漁ってたアバズレ女だったよ。」



「嘘だろおい....。」




・・・てっきり親父の方が、と続けた男だったが、




それを笑いながら見つめる初老の男に釘付けとなっていた。







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