童貞を奪った責任





 私の家族に気に入られている優磨は、私が放課後にクラスの女友達と遊んでいる間も、一人で(うち)にやって来る。





「おかえり~。」



 玄関の戸を開けて、優磨の靴が見えると一目散に、靴を脱ぎ散らかしながら一目散に居間へと向かう。


 台所に立つお母さんが、味噌汁の味見をしているのを横目に通る過ぎると、そこでお爺ちゃんとオセロをして遊んでいる優磨を発見する。





「優磨ただいまぁあ!!」


 つい数時間前にも、学校で一緒だった彼だけど、もう家族も同然な彼の頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でまわす。

―――――愛犬を愛でる様に。




「やめろよ、今いいとこなんだから。」


「ほうほう、今日こそは爺ちゃんに勝てそうかい?」




 私も小さい頃から、お爺ちゃんと娯楽を楽しむとしたら大半がオセロで、最初は負けっぱなしだったが、これは心理戦だという事にいち早く気付いた私は、今じゃお爺ちゃんを負かす程の腕前に成長していた。



 前に二人で対戦した時に、優磨は負けず嫌いだと言う事が判明し、



 
「あ、そこに置いたら負けるよ。」


「んな!!そんなはずは....」





 彼が黒を置き、ひっくり返す白。だけれど、まんまとお爺ちゃんの策略に嵌った優磨は惨敗してしまった。





「まあまあ、泣くなよ小僧。」



 そんなスカした台詞を吐きながら、悔しがる優磨の肩に手を置く私は、最近はまっている小説に読み耽る。




「小僧じゃないし、杏と同い年の男だって忘れてない?」


「そんなの私に勝ってから言いなさい。」




 その時は、まさか優磨に負ける日が来るだなんて思ってもいなかった。





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