童貞を奪った責任
―――――――高校二年の夏、私は優磨に初めてを捧げた。
初めての行為は、裂ける傷みに痛くて耐えられず何度も叫び声を上げた。....泣いたって、彼が果てるまで止めてなんかもらえなかった。
「....杏ちゃん最近顔色悪いね。」
「あー....そうかな?」
優磨は毎日の様に、私の家にやって来ては、身体を求めてきて、その行為中に私の身体の隅々にキスマークを残した。
学校公認の【田崎夫婦】などと、おしどりカップルと冷やかされていたが、最近の優磨は少し....というかかなり変であった。
クラスが違う所為なのか、処女を失った日以来、自分のクラスには来ないでと告げてきて、彼の方から私を訪ねてくる。
一度も絡んだ事が無い男子の口から、【伊丹 杏】という名前が出れば、「お前、俺以外の男に色目使ってんのか!?」と発狂しながら、部屋で繋がった状態の儘で殴られた。
最初は顔は避けていたが、それもどんどんとエスカレートしていく。
乾いた音が室内に響き渡った時、私の口は切れていた。シーツに垂れた赤黒い血に、心臓の鼓動が速まって恐怖心を抱いた。
「裏切った杏がいけないんだ。」
「...っ私、何もしてないよ。」
「嘘吐くなよ。なんで俺以外に笑いかけるんだ!!」
――――――狂った心は、周りをも震撼とさせ、
「おい、田崎。最近伊丹の身体中に痣があるの、何か知ってんだろ!?」
目に見えて分かる私の異変に気が付いた、中学の頃の友人の男は、休み時間に教室にやって来ていた優磨に詰め寄ったのだ。
「うるさっ、部外者がしゃしゃり出てくんじゃねーよ。」
「はあ!?お前どうかしちまってるぞ。」
純粋無垢だと思われていた、中世的な顔を持つ天使の様な男の子は、少しずつ時を重ねながら、心に黒い闇を浸透させていたのであった。
彼にも何か事情があるに違いない....。そしてきっと私にも非が有るから、彼が怒るんだ。
殴られたって私が謝れば、「痛かったよな....」と腫れた頬を優しく撫でて、
「好きだから、俺は杏しか要らないから....。どうか俺を捨てないで、」
泣きそうになりながら訴えかけてくる彼は、儚げであった。