童貞を奪った責任
当時の私は優磨に毒されていった....。
最後に彼を見たのは、いつも通り行為に及んだ後のことである。
静まり返った室内で、彼の携帯電話が、けたたましく鳴り響いた。その発信元の人物を確認した優磨は顔を顰めると、大きく舌打ちを落して、渋々と通話を開始したのだ。
「――――――え。」
その時、聞こえてきた相手の声は男性のもので、それが後に彼の実の父親からの連絡だと知る。
離婚してから一度も会っていなかったであろう。母親と自分を捨てた父が、久方振りに連絡を寄越してきたと思えば、それは彼が高校に入学した頃から精神病棟に入院していた筈の実母が自殺したとの凶報だった。
静まり返った部屋で、密かにだが鮮明にその内容が、聞いてはイケない内容だと分かっていても、否応無しに入ってくる。
通話を終えた優磨は意気消沈し、手元から携帯が落下していった。
母親の最期は、ぎりぎりまで一緒に時を過ごした実の息子では無く、母親を追い詰めた父親によって知らされる事は、この上ない屈辱だったと思う。
「優磨、大丈夫!?今すぐ病院に行こう。」
彼よりも、私の方が頗る慌てていたであろう。
急いで下着を身に着けて、洋服を着終えた時.....
未だに裸の儘の優磨が、私の前に立ち塞がって、いつの間にか追い抜かされた長身は、私を見下しながら.....
「――――行かせない。杏は俺の事だけ考えてればいいんだ。」
その言葉を皮切りに、身体が宙を舞う様に吹っ飛んで壁にぶつかった。
一気に揺さぶられた頭は、脳震盪を起こして、そのまま意識を失ってしまった。