童貞を奪った責任
次に目覚めた時、その場所が病室だと悟る。
時刻は真夜中であろう。消灯した室内で少し身体に負荷を感じた私は、未だ朦朧とする意識で、その重みの正体を探ろうと起き上がれば、そこには俯せて眠りにつく両親の姿を見つけた。
しっかりと意識を取り戻して、二人を起こすと慌てた様子で当時の状況を聞いてきたが、正直何から喋り出せばいいのか分からなかった。
只、二人の口からは、優磨が私を抱きかかえながら『救急車を呼んで!!』って叫んでたとか....。
そして、意識を失くす前に知った彼の母の死は、真実であり....
そこで初めて、私は気付いてしまった。
彼を守ってあげたいという親切心は、より彼を孤独にさせていたということに.....。
身勝手でお節介な行動、言動が彼を狂わせてしまい、最短距離に居続けた私を繋ぎとめようと躍起になっていたのだと。
その答えに辿り着いた時には、既に遅し.....
わんわんと喚き、大粒の涙を流した私は、優磨の前から消える選択をしたのであった。
優磨という存在は、私のはじめての集合体だ。歪になってしまった彼の愛を育てたのは他でもない私であった。
もう、恋なんかしない。人を愛したりなんかしない.....。
そう決心し、私は新たな人生を歩み出したのだ。
......それなのに、数年振りに意図せず再会してしまった彼は、私を憎んでいるどころか、昔の所業の数々が夢・幻の如く、優しく抱きしめたのだ。
「ずっと謝りたかった。本当にごめん。」
覚束ない頭でも、彼の声をきちんと拾い上げる。火照った私の身体に、冷たい優磨の肌が触れて、とても心地よかった。