王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「あ、はい! 起きてます」

 私はペンダントを自分の首にかけると、そのまま朝食の席へと向かった──



◇◆◇



 私が朝食の席に着いた少し後で、レオが入室してくる。

「「「おはようございます、レオ様」」」

 大勢のメイドや執事たち、そしてキッチンの奥の方にはシェフの人も頭を下げて挨拶している。
 手を挙げて挨拶すると、そのまま自席に座った。

「……よく眠れたか?」
「え、ええ……」

 私はユリウス様と会ったことを知られてはいけないと、なんでもない様子で返事をする。

「…………」
「…………」

 いつも多くを話すほうではないけれど、配膳が終わるまでの時間がこんなに無言だったことはない。
 いや、私は変に意識しすぎていて時間を長く感じているだけかもしれないけど……。

「ユリエ」
「は、はい!」

 しまった、返事が上ずった……。
 ちらっと彼の方に目を遣るけど、なんでもないような様子で水を飲んでいる。
 よかった……バレてないらしい。

「後で俺の部屋に来い」
「へ?」
「聞こえなかったのか?」
「いや、はっきり聞こえました」
「じゃあ、問題ないな。来い」

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