王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「俺はお前が好きだ」
「──っ!」
「だが、その感情とは別にお前と契約を交わしたい」
「けいやく……」
「この鍵をお前にやる。自由に調べていい。ただし、聖女の力を発現して、いや聖女の力でなくともいい。妹の命を救ってほしい」

 レオは静かに私に頭を下げた。
 彼のその真摯な態度に心を打たれる。

 確かに妹さんのことは私もできるなら救いたい。
 でも、私にできる……?
 本当に救える?

 目の前にいるこの彼を、救えるだろうか。

 私の脳内に街の人たちや第二王宮の人達からかばって助けてくれた彼の姿が思い出された。
 現代にも戻りたいけど、まず彼を救わなければ、私はここを立ち去れない。

 なら……。

「その契約、結ばせてもらうわ」


 そう言って私は彼の手を取った──


******************************



【ちょっと一言コーナー】
一人称が個人的には苦手と思っています。
でも頑張りたい……!

【次回予告】
レオの事情、過去を知ったユリエ。
もらった鍵を手に地下室に向かうが……。

次回、『聖女の力(2)』。

< 108 / 167 >

この作品をシェア

pagetop