王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 なんとかクリシュト国で使われている言葉はおおよそ読めるようになっていたが、これはその言語でもない。
 コーデリア国も同じ言語だったから調べるときも、話すときも問題なくいけたんだけど……。

「とりあえず読めるのがないか、探してみるか」

 私はおおよそ一人で読める量ではない本をなんとか少しでも早く見ようと急いで調べていく。
 本を棚から取っては中身を見てみるが、やはりいつまで経っても読める文字にたどり着けない。
 おそらく古典のようなものかもしれない。
 上の階にあった書庫室の本とは明らかに古さが違う。
 紙の質や本の閉じ方も、本の劣化の仕方もそうだ。

「とりあえず、読めるのから……」

 古文書のようなものは王族であるレオなら読めるかもしれない。
 私は本棚の背表紙をざっと眺めて読めそうな本を探していく。


 ざっと一時間くらい本とにらめっこしたり、上の方にある本を取るために何度か踏み台に乗ったり……。
 昼食もとらずに私は調べていく。

「──っ!!」

 そんな時に突然読める文字で書かれた本に出会う。
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