王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 高熱で意識を失いそうな、ぐわんぐわんしている頭のような、そんな心地。

「ふふ、その感じ、無事に効いてきたようね」
「……え?」
「睡眠薬に加えて拘束魔術をかけてる、それに、もう儀式は始まっているのよ」
「ぎ……しき?」
「ええ、あなたを贄にしてコーデリア国最初で最高の魔術師だった、原初の魔術師を召喚する。あなたはこの国の繁栄のために死ぬのよ! 光栄でしょう?」

 光栄……私、死ぬの?
 「にえ」って「生贄」よね?

「あのバカ息子は第二王宮におとなしくいればいいのに、私達の邪魔をしてきた。せっかく聖女をクリシュト国から奪い返したのに、勝手に第二王宮に連れて行って婚約者とかいって」

 え……? それってレオのこと?
 じゃあ、もしかして目の前にいる悪女は、高貴そうな人じゃなくて、まさかまさかの……。

「王妃……」
「あら、『様』をつけなさいよ、えらそうね。さ、時間が惜しいわ。とっとと終わらせましょ」

 そう言って隣に立っている魔術師に合図をすると、彼は私に向けて何か魔術のようなものを増幅されて攻撃してくる。
 ビリビリと身体が痺れて、そうして段々力が抜けていく─

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