王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 どうやらユリウス様はその文字が読めるらしく、内容が把握できたみたい。
 私は何が書かれているのかわからず、二人を交互に見ながら話に耳を傾ける。

「ここに、100年前の聖女が一度クリシュト国に行ったことと、元の世界に帰還したことが書かれている」
「クリシュト国にも聖女がいたことは確かに伝わっている」
「おそらくその人物がこの聖女だ」
「では、彼女は戻ったと……?」
「ああ、当時まだ魔術師が多くいたこの国で王宮に仕えていた魔術師が、召喚元に聖女を戻す薬を作ったそうだ」

 聖女を召喚元、つまりは元の世界に戻す薬を作れたってことよね?
 でも100年前の話だし、確か今はコーデリア国に魔術師はあんまりいないよね。
 じゃあ、どうやって……。

 私の疑問が顔に出ていたのか、私の心の中での質問にレオが答える。

「王宮に一人、その薬を作った子孫がいた。そいつに作ってもらったのが、これだ」

 本の傍にあった頑丈そうな小さい箱を手繰り寄せる。
 鍵の仕掛けをはずすと、中には小さな小瓶が入っていた。

「これが」
「ああ、元の世界に戻れる薬だ。100年前から伝わる作り方でおこなった」

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