王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 微笑んではいるけど、なんか懐かしそうな、でも複雑そうな表情をしている。

「お母さん?」

 私は思わず声をかけると、ちらりとこちらを見て私に尋ねて来る。

「クリシュト国のみなさんは元気だった?」
「──っ!!!?」

 絶対に現代で聞くことがないと思っていた言葉を聞いて私は思わずびくりと肩を揺らした。
 なんで……お母さんが、クリシュト国を……。

 私、何か向こうの世界のこと話したっけ?
 あれ? 何も話してないはず……あれ……。

 お母さんは私の戸惑いを見て、ごめんごめんと笑って謝った。

「サクラを思い出すわね」

 それが、この現代にある桜じゃないと確信した──


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【ちょっと一言コーナー】
お母さんとお花見からの、というお話でした!
コーヒー好きなのは私がそうだからです!

【次回予告】
母親の口から異世界の話が出たことに驚きを隠せない友里恵。
そうすると、彼女はゆっくりと自分の過去を話し始めた──
次回、『母娘の時間と桜(2)』。
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