王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「依頼?」
「そう、国賓としてクリシュト国に行ってくれないか、って」
「それで、行ったの?」
「行った。コーデリア国の代表として、聖女として」

 いきなり国を背負って行けといわれる気持ちはどうだったんだろう。
 私だったら緊張どころか、もうのたうち回るくらいのプレッシャーだし、何をしていいのかもわからない。

「聖女っていっても一度呪いにかかった騎士団長を救っただけ」
「え!? 騎士団長を救ったの?」

 あら、すごい?なんて冗談めいた感じで言うお母さん。
 いや、騎士団長を助けるなんて……しかも呪いを解いたとは聞いてたけど、でも、すごいんじゃ……。

「偶然だと思うわ。たぶん。だって、あれ以降一度も力を使えなかったし」
「そうなの?」
「そう」
「で、クリシュト国に国賓としてついたんだけど、その食事会帰りの廊下で倒れたのよ」
「え!?」

 なんでもないことのように言うが、倒れたなんて聞いたらそりゃ驚く。
 昔からやっぱり身体が弱くて、異世界での疲れがきてたのかもしれない。
 お母さん大丈夫だったの?

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