王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「そう。あなたと繋がっていたの」
「ええ」
「ふん、所詮よくわからない異国の人間だわ。な~にが聖女かしら。色仕掛けでも使ってそそのかしたのでしょう?」
「いいえ、私から声をかけましたよ、あなたの動向がおかしいことに加え、急に現れた聖女がいきなり第一王子の婚約者になるなど、どこからどうみてもおかしいですからね」
「私がやったという証拠はないわ」
「口を割りましたよ、王宮魔術師も」
「なっ!」
「あなたはあの方に慕われていると思っていたのでしょうが、残念でしたね。彼なりの処世術ですよ、あれは。地下室にあった術の痕跡、そして彼が術をかけるために使用した贄の出処も押さえました。すべてあなたの故郷の村の人間の子供の死体や植物でした。村長がおびえながら話してくれましたよ」

 聖女召喚には多大なる贄が必要となり、その中には6歳までの子供の死体と特殊な植物と大量の血が必要になる。
 それらは全て王妃の生まれた故郷で集められていたことがユリウス様の調べにより判明した。
 自分の召喚にそのような大きな犠牲を払っていたことに、そして何よりただ自分の息子の婚約者にしたいから、自分が王妃として盤石な地位を得たいからという理由でそれがなされたことに腹が立つ。

「もう一つ、あなたは罪を犯しました。10歳の時に私に毒を盛ったのはあなたですね、王妃」
「なんのことかしら?」
「当時のメイドを探し出し聞き出しましたよ、私の皿に毒を盛ったと泣きながら伝えてくれました」
「…………」

 私とユリウス様は並んで立ち、王妃を見上げて問う。

「「何か申し開きはありますか」」
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