王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
◇◆◇



 慎重に調査を開始して数ヵ月が経過した頃、やはり王妃様が王宮魔術師を使って様々なことを企んでいたことが判明した。
 まずリーディアの実家であるクルドナ家は実際に存在しなかった。
 父親と母親、それどころかそんな侯爵家すら存在しない。
 そして、地下牢の部屋には魔術痕があり調べたところ聖女召喚をした可能性があった。
 つまり高い確率でリーディアは異世界からきたと思われる。
 そしておそらく彼女を観察している限り偽の記憶を植えられて過ごしている。

「なんてことを……」

 聖女召喚して自分の息子の婚約者にするために記憶を捻じ曲げるなど、あってはならないこと。
 私は好きな人がそのような目にあっていることにいら立ちを覚えたが、そんなことよりも何もできない自分に腹が立った。

「絶対に救って見せる……」

 私は王太子妃教育を受けて自室に戻るリーディアを見つめて呟いた。
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