王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「やはり王宮魔術師のオレクは隣国のコーデリア国のスパイでした」
「──っ!」

 隣国のスパイってそんな……じゃあ仕組まれてたってこと?

「また、すでにオレクは牢屋を何者かの手引きで脱出しており、先ほど見たときにはもぬけの殻でした」
「そうか、アルベルトがまだ近くにいるはずだ。急ぎ連絡を取って隣国の様子を探って来るようにと伝えてほしい」
「かしこまりました」

 側近の方は部屋の外へと駆けていくとユリウス様は一瞬考える仕草をした後、私に声をかける。

「ユリエ、私は今から王とこの事について話してきます。部屋までお送りしますので、また後日お話しましょう」
「私は大丈夫です。急いで王のところへ」
「……ありがとう。ではそうさせてもらいます」

 そう言ってユリウス様は部屋から出て行かれた。

 王妃様のことも仕組まれたことだった……。
 まだこの裏には何かあるのかもしれない。
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