王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
馬車が市場の近くに到着すると、私の目の前には見たこともない活気のある街の景色が広がっていた。
「わあ~すごい」
「ここは普段は民衆たちの憩いの場になっていますが、休日にはマーケットと呼ばれる市場が開かれます。そこでは──」
ユリウス様が説明をしてくださっていた気がするけど、私はもう街の凄さと久々の解放感に圧倒されていた。
絵本や漫画で見た世界のような素敵な街並みで、石畳の地面に建物はレンガをメインに作られている。
それにみんな可愛い民族衣装のような服を着ている。
「ママ~待って~」
はあ~! 子供たちの服もフリフリで可愛い~!!
なんて素敵な街! そして国なの?!
「気に入ってくれたようですね」
「はいっ!」
「あそこのテラスで紅茶でもいかがですか?」
「ぜひっ!」
そう言って二人で店主の人に紅茶をお願いする。
すると、店主がユリウス様にこそっと耳打ちした。