王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
 目が覚めた時、私はベッドにいた。
 夢? 私寝ちゃってたの?
 でも、そのベッドの香りがいつもと違うことに気づき、自分に何が起こっているのかわからなかった。


「やっと目が覚めたか」
「──っ!」

 気が付くと、ベッドの横にはがっしりとした体格でアルベルトとは違う肩まで伸びた青い色の髪が目に付く男がいた。
 彼の藤色、いやもっと濃いアメジストのような瞳が近づいてきて、細く大きい手が私の顎を捕らえる。


「聖女様、俺のおんなになれ」


 私はまた何かに巻き込まれたらしい……。
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