王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~
「しかし、なぜかユリエ様に逃げる素振りがないため、なにかしら意図があるものと思われます」
「逃げる素振りがない?」
「はい、第一王子とも何かに怖がるような様子ではなく普通に話しております」
「…………」

 ユリウスは口元に手をやって少し考えると、何かに気づいたように語り出した。

「もしかして聖女召喚について調べている? あるいは帰還方法について探している?」
「ユリエ様なら可能性は十分にあります」
「その可能性が高いな」

 報告を全て終えたアルベルトはユリウスに礼をしたあと、再び仕事へと戻った。
 その場に残されたユリウスは目を閉じてソファでうなだれる。

(調査をしているかもしれないが……それでも心配すぎる)

 一人で抱え込む癖のあるユリエの心配をして、ユリウスは国王に隣国に兵を送る要請をしに執務室へ向かった。


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